はじめに
今回は、特にドメインを指定せず、読むと間違いなく誰にでも勉強になるであろうと感じた書籍を紹介します。
データ分析:実用系
Kaggleで勝つデータ分析の技術
"Kaggleで勝つ"と題名にはありますが、データ分析、特に予測モデルを作るようなケースで重要な基礎知識が実践的に学ぶことができる非常に良い本となっています。例えば、交差検証といえば、基本的には汎化誤差の推定量として統計学の本に情報量基準やらと一緒にちょろっと書かれている事が多いです。しかし本書では汎化性能を競うコンペであるKaggleを題材に、より実践的な態度で検証を実施する手立てを色々と学ぶことができます。コンペに寄った内容としては欠損値を気にしなくて良いXGBoostの使い方や、簡単なハイパーパラメータチューニングの話なども載っています。それらも勿論面白いですが、データ分析をする、機械学習モデルを作る人は、ぜひともいろいろなデータ形式に対する前処理や検証手法を本書で勉強してみましょう。
ウェブ最適化ではじめる機械学習

ウェブ最適化ではじめる機械学習 ―A/Bテスト、メタヒューリスティクス、バンディットアルゴリズムからベイズ最適化まで
- 作者:飯塚 修平
- 発売日: 2020/11/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
ウェブデザインのクリック率などを題材に、機械学習を用いた最適化手法ついて広く紹介している本です。A/Bテストから始まり、メタヒューリスティクスやバンディット、ベイズ最適化などまで、それぞれの基本を学ぶことができます。 ウェブの人に限らず、"実験結果を観測しながら適応的に(機械学習モデルによって)次の水準を決めて、実験計画を進めていく適応的実験計画法"などのキーワードが刺さる場合は手に取ってみても良いでしょう。
数式は丁寧ですが、ライブラリお任せHow to本よりは、理屈の説明にも紙面を割いているので、もしかしたらイメージよりも堅く感じる章もあるかもしれません。しかしその分ちゃんと通読した場合はたしかな知識と力がつくと思われます。
データ分析:因果推論

- 作者:安井 翔太
- 発売日: 2019/12/27
- メディア: Kindle版
かなり初歩的なところからRのコードを踏まえて実践的に因果推論を体感することができます。 理論的な部分はかなり割愛されていますが、因果推論を広く触れておく、次のレベルの本の足がかりにする、という点においてまさに入門にうってつけであると感じました。
本書で基本を抑えておくと、後述する計量経済学の本なども概念的なところはかなり楽に読めると思われます。
入門 統計的因果推論

- 作者:Judea Pearl,Madelyn Glymour,Nicholas P. Jewell
- 発売日: 2019/08/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
グラフィカルモデルによって因果推論をシステマチックに扱っている本です。Rubin(統計科学者)とPearl(計算機科学者)が因果推論でとても有名なお二方なのですが、そのPearlさんの書籍です(決してRubinとPearlは全く相反する概念を扱っているわけではないはず)。
因果推論を行いたい場合、着目する変数間の関係性にどのような仮定を設けているのかは非常に重要です。ときに、ある因果推論を実施する時の条件付けの操作が、少々発見的・技巧的に感じるところが「効果検証入門」や「計量経済学」ではありました。本書では、自身が立てている仮説(+所持しているデータ)と因果推論が、システマチックに対応付けられることを学べます。特にバックドア基準、フロントドア基準というものを知ったときには少し感動を覚えました。
計量経済学
私自身は経済学には詳しくないので、経済実証分析を題材に、統計・因果推論の様々な手法を見ていくという目的で購入しました。「効果検証入門」で学んだ手法についても更に詳しく触れられており、ちょうどよいステップアップになるという感じです。 統計学の基本的な解説も紙面を割いて書かれているので、最初からこの本で行けるという場合はそれでも良いかもしれません(私は因果推論は無知だったので、効果検証入門を読んでいて良かったと思った)。ミクロ経済周りが特に効果検証入門との親和性が高いでしょう。
マクロ経済編では時系列分析がメインとなります。スライディングウィンドウでの重回帰から、自己相関がある系列を扱うために差分過程を見る、更にARモデル、ARCHモデルへと発展していきます。状態空間モデルの話になると更に紙面が辛いと思われるので、本書では扱われていませんでした。
大人の教養
世界標準の経営理論
少し毛色が変わりますが、ここでは組織の一員として働くすべてのビジネスマンに是非知っておいてほしい内容が(いや、別にビジネスマン歴短いけど)ふんだんに書かれている経営理論の本です。経済学に基づく経営理論、心理学に基づく経営理論、社会学に基づく経営理論をそれぞれ、研究のリファレンスを付けながら解説しています。
これまで、"影響力の武器" や "事実はなぜ人の意見を変えられないのか" などの心理学研究に基づく説得の科学の本を読んだりしてきました。これらはとても良い本なのですが、如何せん、仕事を意識するというより、そういう事実の羅列という側面が強かったです(まあ、実践できないのは僕自身の能力の問題だが)。
今回、世界標準の経営理論では、会社に属するあるいは社会に属する一員として、どのような振る舞いが実際にどのような効果をもたらすのかを明快に語っており、なんだか、求めていたのはこの本だったのでは、と思うような内容になっていました。とてもおすすめです。本当に分野に依らず読んでほしい本ですね。
科学的に正しい筋トレ 最強の教科書

- 作者:庵野 拓将
- 発売日: 2019/03/28
- メディア: Kindle版
社会人になると運動不足が目立つようになるでしょう。 そんな中、ガチムチマッチョとは行かないまでも、筋トレを始めるという方は多いのではないでしょうか。僕も身体を整えるという観点で筋トレを行っています。しかし、このご時世、ジムに行くのも気が引けます。家で、正しい知識のもと、正しく筋トレを実践したいですね。そんなときに役立つのがこの本です。しっかりと科学的研究に基づいた結果を示しており、とても信頼できるものになっています(本書のプロローグは、介入実験と観察実験、RCTの話から始まる…笑)。
特に、巷のマッチョにトレーニング方法を相談すると「10回上げられるダンベルに意味はねぇ」と叱責を受けることもあり、中々トレーニングの敷居が高いなぁと思っていたのですが、この本によるとまったくもってそんなこと無いそうなので、自信を持ってトレーニングが進められます。とりあえず、一動作をフルレンジで8秒以内に実施する。というのを限界までやればよく、負荷の大きさは何でも良いのです(繰り返した結果の総負荷が大事)。
落合務のパーフェクトレシピ
料理が作れるのは、生存するため、食を楽しむため、大人の嗜みとして、どの階層においてもとても有益です。本書は一人暮らしの大の味方であるパスタのレシピが載っています。この本の特徴は、単なる料理How to 本にならないよう、Why? にこだわり、その処理をする理屈に拘っています。理屈がわかると、応用も効くようになるのでより一層料理が楽しくなるという素晴らしい効果付きです。
正直言って、お店で出てもおかしくないレベルでパスタが作れるようになります。本当にありがとう。